2018/06/12
優良企業は長期視点で、苦戦企業は短期視点で考える
日々、多くの中小企業の社長とお会いしていると、社長が気にしている様々な課題や関心事が佐原に投げかけられる。
それらの課題や関心事や大きく二つに大別できる。
一つ目は中長期視点での経営課題であり、二つ面は短期視点での課題である。
一つ目の中長期視点とは例えば下記のようなものである。
・「佐原さん、今期の利益は例年通り確保できる見込みでして、設備更新や人財投資など、今からできる将来投資は何があるでしょうか?」
・「既存事業が盤石なうちに、新事業展開を考えていきたいと思います。場合によってはM&Aで成長が見込まれる他社を引き受けながらでも・・・」
・「私の息子はまだ19歳で大学生ですが、今のうちからできる事業承継対策を早めに進めていきたいと思っています。その方法としては・・・」
・「事業も好調、設備更新も計画的に進められています。後継者も当社に入社して準備も万端。ただ・・・ 震災やパンデミックなどのリスクの備えとしてBCP(事業継続計画)を策定しておきたいと思っているのです。」
上記の話題は、論点が中長期視点に立っている。
一方で短期視点の話題は下記のようなものである。
・「ウチの会社、今週末の支払い資金に困ってまして、銀行に借入調達をお願いしたら、資金繰り表というものを作るように要請されてまして、どうやって作ればよいでしょうか?・・・」
・「今月末の支払はなんとか乗り切れるのですが、来月末の給料支払い資金が不足する見込みでして・・・」
・「今期の決算をなんとか黒字にしたいのですが、売上確保策は○○のように進めて、経費は△△のようにして・・・」
会社は生き物でもあるため、その業績は良い時も有れば、苦戦するときもある。ただそうした業績の良し悪し如何で、経営の視点も長期視点になったり、短期視点になったりもするであろう。
私は、コンサル顧問先の後継社長達に、10年スパンの中長期計画を策定してもらっている。
その理由は、会社が苦戦しているときでも、中長期視点を忘れてもらいたくないからである。
経営者であれば誰だって、資金繰りや目先の収益確保、人不足解消などの目先の課題を全てきれいさっぱり解決し、その先の3年後、5年後の将来に目を向けていきたいだろう。
しかし、「まずは目先の経営課題を解決しなければ、その先へなど目を向ける余裕などはない。」と思っている社長達が多い。
だからこそ、敢えて佐原は中長期視点で経営を考えることを提案している。
日々降りかかる火の粉を振り払うように度々起こる経営課題をさばき、目先の経営課題を解決し、それを乗り越えて中長期目標への対処をしていかねばならないからである。
日本の経営コンサルタントの祖とも言われる一倉定氏は、次のように自身の書籍に記している。
「ボンクラ社長は、今年のことだけを考えて、未来を考えない。
優秀な社長は、今年のことは考えず、わが社の未来を考える。
今年のことは既に三年前に手を打っているからである。」
(一倉定著:『一倉定の経営心得』より)