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2019/12/02
自社株式を巡る確執

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中小企業において、自社株式というものは普段はその存在すらあまり意識しないものではないだろうか。

それでも事業承継のタイミングでは、自社株の移転方針を考え、計画的に後継者への移転を考えざるを得ない。

そうしたタイミングであっても、それは経営権を段階的に譲り渡すという性質のもので、それが身内の深刻なトラブルにまで発展することはそれほど多くはないのではなかろうか。

それでも佐原がこれまでに事業承継の経営支援に関わった会社の中では、実際に深刻なトラブルになっていたケースもあった

その会社では、社長と後継者である甥が自社株式の所有を巡って揉めていた

揉める前までは、社長が甥に後継者として会社を任せる口約束がされていた。

だから、甥としても次期社長としての自覚があったし、会社の銀行借入約5千万円の個人保証を負うことまでしていた。

その段階までは、甥の株式持ち分は20%ほどであった。

しかしその後、社長は甥に次のように言うことが増えてきた。

お前、まだ社長は俺なんだぞ。今はまだ俺の指示どおりに会社を経営しろ。もし俺の意向に沿えないのであれば後継社長どころか役員を降りてもらうぞ。

こうした社長の言動に、後継者である甥は社長に対する不信感を増していった。

そして甥はこのように考えるようになっていった。

自分は会社を継ぐつもりで銀行借入5千万円もの個人保証を負っているのに、社長を継がせてもらえないばかりか役員を降ろされたらたまったもんじゃない。

残るのは個人保証だけじゃないか。

会社法では、発行済み株式総数の50%以上を所有していれば、株主総会の普通決議で役員を解任することができる。

この会社のケースでは、甥は自社株式の20%しか保有しておらず、現社長は40%を有している。

こうしたことを背景に、甥は他の株主の持ち分を何とかして我が物にしようということを画策していた。

こうしたタイミングで、40%を保有する親族の株主が亡くなった

すると甥は、亡くなった株主の葬儀が終わるか終わらないかという時に、その自宅に押し掛け、株式を譲り渡すように半ば強引に事を進めていったというのだ。

このことを知って驚き慌てたのは社長の方であった。

もし、甥に過半数以上、場合によっては3分の2以上の株式を集められたら、今度は逆に解任されるのは社長の方である。

社長の方も、その亡くなった株主からの株式移転が正当に行われたかどうかを含めて、弁護士に依頼しながら争う構えとなった。

こうなると、本業の営業に専念して業績向上を図るという動きすらままならなくなる。

双方の弁護士を交えての争いは、自然と従業員の耳にも入ることになり、会社内でも社長派と甥派とどちらに付くのか、という混乱に至った。

これは、どこかの大手家具小売店の話ではなく、従業員規模40人ほどの会社での話である。

自社株というものは、普通に会社経営をしているときにはその存在すらあまり感じないものであるが、事業承継などのタイミングで一度経営権を巡る微妙な綱引きが始まると、その扱いが非常に厄介でセンシティブなものである。

株式に関する法律的な取り扱いも大事ではあるが、その前に親族間の調和とコミュニケーションを密にし、大きな争いに発展しないような関係づくりを日頃から心がけておきたい。

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