2019/11/11
現場から離れたい後継者と、離れられない後継者
「経営者の経営管理の在り方」を語るときに、二つの考え方がある。
①「しっかりと現場で実践を積み社員との一体感を醸成する在り方」
②「現場のルーチンワークから離れ、経営管理に専念する在り方」
この二つの在り方は、いずれが正しいのだろうか?
後継者にもこの二つが整理できている人は意外に少ない。
それぞれにはメリットとデメリットがある。
まずは、①「しっかりと現場で実践を積み社員との一体感を醸成する在り方」から見ていこう。
これは、現社長が下請製造業などの現場で叩き上げの場合、後継者にも現場の下積みから経験するように命じられる場合が多いだろう。
なぜなら、製造現場のベテラン技能工の信頼を得ながらコミュニケーションを取っていこうとした場合、最低限のものづくりのことが理解できていなければ「あいつはわかってない」と一蹴されてしまうからだ。
そして、製造現場のものづくりの事が理解できていなければ、技術営業や見積りから単価設定、アフターフォローまでの事務仕事もおぼつかない。
だから現社長から現場仕事をしっかり習得するように言われるし、それは的を射ている。
しかしだからと言って、いつかは経営者になる後継者がいつまでも現場仕事ばかりではいけない。
会社経営には、将来戦略を描き、それを実行するための組織と人事を整え、財務面を見つつ営業をしていく必要がある。
そして、時代の変化に対応していくためには、時代の節目では新製品開発や新販路開拓といった新事業展開を推し進めなければならない潮目や局面というものがある。
現場仕事にいつまでも没頭していてばかりでは、経営者に必要な大局眼を持てなくなってしまう。
だから、「どこかのタイミング」で現場への関与を少しずつ減らし、営業や財務といった管理部門へ段階的に業務内容をシフトしていきたい。
ただ、そのときには計画的に覚悟を決めてシフトしていきたい。
なぜなら、中小企業の現場では人材に余裕がある場合は少ないからだ。
後継者であっても、現場で必要な人材となり居場所ができてくると、その現場から離れづらくなる。
後継者が現場から離れ、手数が少なくなると途端に仕事が回らなくなってしまうこともあるからだ。
だから、計画的にシフトしていきたい。
これができないと近い将来にどうなるか?
現場仕事には没頭するが、将来戦略や経営数値に目を向けられない職人的後継社長が出来上がってしまう。
一方で、②「現場のルーチンワークから離れ、経営管理に専念する在り方」はどうだろうか?
時々、現場に入りたがらない後継者を目にする。
どちらかというと、学校を卒業してそのまま自社に入社する後継者よりも、都会の大学を出て大手企業に修行として一度就職し、家業に戻って来た後継者にこのタイプが多い。
大手企業での仕事経験を積んでいるからエリートタイプであるし、頭脳明晰である。
そして経営管理や組織のルールは一通り知っている。
そのせいか、家業に戻ってくると中小企業の経営管理の甘さがよく見え過ぎてしまうのだ。
決めたことは守られないし、従業員にはいくら言っても理解されないし実行しない。
現場作業者は、飲酒運転で事故したり、サラ金にはまったり、異性関係でトラブルを起こしたり・・・
大企業ではまず起らないようなことが、中小企業では日常的に起こっていたりもするのだ。
こういった声は、佐原も実際によく耳にするし、前職の信金職員が中小企業に転職すると似たような事を聞かされる。
しかし、後継社長たる者はそのような現場に「まずは」どっぷりと浸かり、現場感覚を自らの骨の髄まで浸みわたらせ、現場作業者とも信頼関係を築きたい。
自分が相手と距離を置けば、相手も自分との距離を取るだろう。
だから、まずは現場に浸かり、現場社員との信頼関係を築いたうえで、段階的に経営管理業務のウェイトを増していきたい。
以上のことから、下記の後継者の在り方は、どちらが正しいということではなく、段階の問題である。
ずっと①だけではいけないし、かと言って②を急ぎ過ぎてもいけない。
①「しっかりと現場で実践を積み社員との一体感を醸成する在り方」
②「現場のルーチンワークから離れ、経営管理に専念する在り方」
・「経営リファイン承継Ⓡ」をより詳しくご覧頂くには下記をご参照下さい。
↓
https://sahara-keiei.jp/businesssuccession/succession04.php
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