2018/08/10
自社でのアルバイトは子への承継の第一歩
前回の事業承継コラムに、40代社長が今から考える子への承継の話を書いた。
夏のこの時期のトピックスは、社長の子が行う自社でのアルバイトである。
40代~50代社長には、高校生や大学生の子が居ることも多いことであろう。
彼や彼女達にとって、8月は夏休みだ。
進学に向けて受験勉強をしている子もいれば、大学の長い夏休みを楽しんでいる子もいることだろう。
折角できたまとまった自由時間なのだから、学業や社会勉強、レジャーにバイトと、有意義に時間活用したいものである。
佐原が関与している企業で、高校生から大学生になる子息・子女がいらっしゃる社長さん達には、「自社でアルバイトしてもらうこと。」をオススメしている。
なぜなら、これが事業承継の第一歩になり得るからだ。
経営者の子達にとって、家業とも言える親の事業は、どんな仕事をしているのかについて、意外に知らされていないのかもしれない。
製造業として優れた製品を作っている会社があれば、サービス業としてお客様に喜ばれるサービスを提供している会社もあるだろう。
親である社長にしてみれば、「労多くして報われない仕事だ。」なんて表面上は思っているかもしれないが、それでもその仕事を続けているのには何か深いワケがあるはずである。
それは、「お客様が求めてくれているから・・・」とか「従業員の大事な職場を守るために・・・」とか、「苦労は多いけれど、頑張ったその先にある達成感が醍醐味だ。」など、使命感や達成感などの遣り甲斐をもって事業活動に邁進しているのではないだろうか。
高校生や大学生たちの年代は、親が考えている以上に鋭敏な感性を持ち、世の中の様々なことを吸収して、その後の人生の糧を吸収する年頃である。
そんな彼・彼女たちに、アルバイトとして自社の仕事を知ってもらう機会をつくったら、きっと「何か」を感じ取ってくれるに違いない。
「何か」とは、お金を稼ぐことの大変さは勿論のこと、仕事を通じてお客様や社会に貢献することや、多くの社員が働いてくれていることで会社の事業が成り立っていること、そうした多くの組織や人が関ることで成り立っている会社を自分の親が経営していること、経営することの責任や醍醐味などである。
自社の仕事を垣間見たからといって、すぐに子が家業を継ぎたく思うとか、継がせるといった短絡的な話ではない。
折角、子息・子女が居るのであれば、彼らの人生の選択肢として家業を承継することの判断材料となる情報を早い段階で提供しても良いのではないか、という問いかけである。
佐原が関与させて頂いている中小企業の後継社長達は、中学生から高校生の時に自社の業務を手伝った経験のある方が多い。
近年では、第三者への承継やM&Aも事業承継の手段として定着してきている。
しかし、できれば自らの子に継がせたいという社長の希望があるのであれば、その可能性の芽を育てる意味においても、子息・子女に自社でのアルバイトを薦めてみるのはいかがだろうか。
きっと「何か」を感じてくれるに違いない。