2018/05/14
事業承継時に起こるナンバー2経営者の悩み
日本で最も高い山は? と聞かれて答えられない人は居ないだろう。
では、日本で2番目に高い山は?
答えられた人は、登山家かそれなりのトレッキングファンである。
答えは、南アルプスにある北岳でした。
もう一問。
世界で一番高い山は? これも皆が応えられるだろう。
言わずと知れたエベレスト山
では、世界で2番目に高い山は?
答えはカラコルム山脈にあるK2でした。
そのくらい、ナンバー2というのは隠れた存在なのかもしれない。
これは、中小企業の会社経営にとっても同様である。
事業承継のタイミングに差し掛かった中小企業では、ナンバー2経営者の声にならない悩みをよく目の当りにする。
ナンバー2経営者とは、現社長の弟であったり、古参番頭だったり、陰日向に現社長を長年に亘って支えてきた経営幹部であり、年齢的には現社長よりも若干若い50歳代中盤から60代中盤の方が多い。
こうしたナンバー2経営者の下支えがあってこそ、これまでに事業を発展させてこられた中小企業は少なくない。
長年、二人三脚で会社経営をしてきたものの、そのバランスが事業承継のタイミングで崩れる場合も少なくない。
ナンバー2であるために、言いたいことも抑え、社長の意を汲んで精力的に動き、会社の発展に貢献してきた彼らの主張は、次のような形である日突然に現れる。
A社の専務a:「社長、私の退職金額、いくらになるのか教えてもらっていいですか?」
B社の専務b:「今年一杯で辞めさせてもらってもいいでしょうか?」
こうしたナンバー2からの突然の申し伝えを聞いて慌てるのは現社長である。
社長からすると「なぜ突然にそんなことを言いだすのだ。今まで良い関係で働いてくれていたのに!?」という驚きと困惑と疑問が入り混じった感情である。
こうしたことの背景には、先の事業承継のタイミングに際して、ナンバー2経営者ならではの「立場の性質」や「不安感」が顕在化することがある。
それは、下記のようなことである。
①ナンバー2経営者は、どこまでいってもナンバー2でありトップになれない
社長の弟や古参番頭社員がこれに当るのだが、現社長の息子が後継者候補として会社経営に加わった瞬間から、ナンバー2経営者はトップになれないことが確定する。
会社経営を社長と共に支え、場合によっては社長以上の貢献をしてきたにも関わらず。
相応の立場や報酬があれば納得もしてくれるだろうが、会社に勤められる期限が数年後に迫ってくると、こうした不安感や承認欲求が噴出する。
②ナンバー2の成果や貢献度合が適正に評価される場合が少ない
ナンバー2も経営者の一員であり、やって当たり前、成果を出して当たり前、という価値観のなかで会社に貢献している場合が多い。それは社長も本人もそういう意識でやってきている場合がほとんどではないだろうか。そうした良い意味での当事者意識があるからこそ、会社に成果をもたらしてきたとも言える。
しかし、そうした成果が、一体どのような形で評価されるのだろうか?
立場か? それとも報酬か?
立場では、ナンバー2の上はトップである社長しかいない。しかし、その椅子は社長の後継者である息子や娘の予約席になっている。
すると、報酬しかないのではないか。それも役員報酬で社長を上回ることは有り得ないだろうから、退職金という形での評価を望むのは自然な心理と言えるのではないだろうか。
③中小企業では退職金がいくらもらえるのか不明瞭であること
ナンバー2として、相応の貢献と成果を会社にもたらしてきたのだ、というプライドを持っている場合が多い。しかし、中小企業では退職金規定などが曖昧であり、役員退職慰労金がいくらになるかなどは、もっと不明瞭である場合が少なくない。しかも、中小企業ではその退職慰労金の財源も限られている。
自分はいくらの退職期をもらえるのか不安だ。適正に評価してもらえるのだろうか?
これがナンバー2経営者の素直な気持ちではないだろうか。
事業承継をこれから進めようとする経営者や後継者は、こうしたナンバー2の立場や心理をよく理解したうえで、対応方針を検討していく必要がある。
具体的には、下記のような事項で対応方針を検討すべきだろう。
・ナンバー2の退任時期
社長とナンバー2それぞれの希望とする退任時期を擦り合わせる必要がある。
人不足の昨今では、ナンバー2には勤められるまで会社に居てほしい、という社長が多いのではないだろうか。
・役員退職慰労金又は退職金の金額
会社への貢献度合や退職時期、本人の希望、会社の財源などを鑑みながら検討したい。
・退職後の処遇
完全に退職するのか、それとも再雇用として処遇内容や契約内容を見直して継続勤務するのかを検討していきたい。
・継続勤務するとして会社内での立場と役割
どのような立場、肩書、職務なのか、を事業承継後の新たな体制とのバランスを取りながら検討していきたい。
・後継者との関係
後継者にとって、真に必要な存在なのか、軋轢は生じないか、後継者の新たな方針を理解して力になってくれるのか。
後継者の意見や考えも踏まえながら検討していきたい。
他にも検討すべきことは、いろいろとあるが大事なことは、ここでも関係者間のコミュニケーションであろう。
ナンバー2の心理的な問題が大きくなってしまう前に、関係がこじれる前に、早い段階での擦り合わせを行っておきたい。
そのようなときには、「外部の第三者を交えた話し合いの場」を意識的に創り出すことが良い契機になることもあります。
当社では「後継社長の軍師」として、事業承継時の「橋渡し役」もサポートしています。
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