後継社長は先代へ紙で伝えろ
口だけでは伝わらないこともある
もう何年も前に佐原が経営支援した会社のことである。
後継社長は、父であり先代社長である83歳の会長に苦しめられていた。
後継社長といっても56歳ほどであり、社長になって10年ほど経っていた。
どのような苦しみかというと、下記のようなとおりであった。
赤字で苦しみ、経費削減をしようとすると、会長からはその許可が下りない。
そして会長は、このように言う。
「経費削減なんかする前に、売上を上げればええんだがや!」
後継社長は、なにも言い返せず額から嫌な汗を垂れ流していた。
また別の日。
後継社長は、不採算部門の某業態店舗の閉店をする決断をした。
しかし会長は・・・
「お前は能無しか! そんなことより売上アップを考えろや!」
後継社長はまたもや、ねっとりとした冷や汗を額に浮かべていた。
いよいよ資金繰りに窮じた日には・・・
後継社長は、遊休土地の売却を決断し、資金確保に動こうとしていた。
そこで会長は・・・
「バカヤロー! どんな苦労をして土地を増やしてきたと思ってんだ!
お前の不甲斐なさのせいで土地を売るだと!
ええ加減にせえや!」
83歳とは言え、この手の会長(創業社長)は手ごわい。
そして、元気でパワフルだ。
だから一代で会社を大きくしてこられたとも言える。
だからこそ、苦労するのは後継社長なのだ。
それにしてもこの会長、もっと後継社長に経営を任せるべきだと私は感じていた。
そして、会社を存続させるには、まずは経費削減、そして不採算店舗の閉店だと私も感じていたし、そのことを後継社長とともに話し合ってきたのだ。
しかし、そうした決断はことごとく会長に打ち消された。
ある日、私は後継社長との打ち合わせのなかで、経費削減計画を数値でまとめていた。
そこには、不採算店舗の閉店とそれによるアルバイトスタッフの減員、人件費削減、店舗のオペレーションコストの削減などを盛り込んでいた。
そして会長にその経費削減計画を後継社長から提示してもらったのだ。
すると会長の反応は・・・
「ごの資料をづくっだのは誰だぎゃあ!!!」
鋭くドスの効いた名古屋弁で叫んだ。
後継社長の緊張はピークに達し、その瞬間、額からは流れるように冷や汗がしたたった。
そして後継社長は「私です・・・」と小声で答えた。
すると会長は・・・
「こんな良い資料が出来るなら、なぜもっと早くつくらなんだぁ。」
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えっ???
また烈火のごとく怒鳴りつけられるかと思った後継社長と佐原は、一瞬呆気にとられた。
このことは後継社長のモーレツ会長のコミュニケーションを円滑にする秘訣が隠れている。
それは、後継社長と会長は、一応は血のつながった家族であり、身近な存在であるがゆえに、いつも口頭でのやりとりが多かった。当然である。
しかし、こうした重要な事柄や、定量的に判断すべき事柄、口頭で伝えると感情的なやりとりになってしまいがちな事柄などについては、「数字を記した書面」で伝えるべきなのだ。
書面であるからこそ、冷静かつ客観的で説得力のある意思伝達に見えるのだろう。
もし、後継社長の皆さんが、先代社長や会長とのコミュニケーションに苦労しているのなら、手間を惜しまずに書面で伝える手法をお勧めする。
こうした「後継社長と先代社長との円滑なコミュニケーション」は、当社の独自プログラムである「経営リファイン承継」の一内容として関与先企業様に取り組んで頂いている。
経営リファイン承継プログラム
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