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亊業承継コラム「後継社長への軍略書」

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COLUMN 98

事業承継を「目的」ではなく「手段」として考えてみる

~ 中小企業に組み込まれた「変化対応のための仕組み」 ~

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「B社の事業承継のことですか? 大丈夫です!

いずれ会社を継いでくれる息子さんが居るって社長も言ってますし。」

このように威勢良く語ってくれたのは、某金融機関の担当者です。本部の経営支援担当者の問いかけに対しての回答でした。

 事業承継とは、後継者が居れば完了ではなく、また、社長を交代すれば完了というわけでもありません。

どうやらその担当者さんは「継いでくれそうな後継者が居る」ということが事業承継であると勘違いをされていたようです。

 また世間の風潮では、事業承継を会社経営の一つの「目的」であるかのように捉えている向きも少なくありません。

確かに事業承継は、会社経営の行方を左右する大事な局面ではありますが、会社経営の真の目的はもっと別のところ、もっと先にあるはずです。

それは、5年先、10年先、20年先といった将来に向かって目指す会社の理想像の実現であったり、経営理念に書いてあるような社会やお客様、社員達への貢献であったりです。

 事業承継を「目的」として近視眼的に捉えてしまうと、自社株の移転と経営権掌握や、社長の交代といった承継に必要な「単なる手続き」に終始してしまいがちです。

しかし事業承継を会社経営のための「手段」として捉え直してみるとどのような面が見えてくるでしょうか?

 一つには、事業承継とは将来に亘ってより良い会社経営を行っていくための「変革点」と捉えることもできます。

現社長が父親で、後継者が息子だとした場合、多くの会社では自社の経営に対する親子の意見が相違する場合が多いものです。そうした意見対立が親子の仲の悪さにつながっている場合もありますが、こうした意見相違が会社の「変革の種」である場合も少なくないのです。

 現社長の生きてきた時代や価値観と、後継者のそれとでは異なって当然です。

後継者達は口々にこう言います。「もっとIT化とペーパーレス化を進めよう。」、「特定のお客様への依存体質から脱却しよう。」、「頑張った人が報われる人事制度にしよう。」、「もっと働きやすい会社にしよう。」・・・

こうした後継者達の問題意識は、現社長が経営してきた既存の古い体質への疑問の投げかけや警鐘でもあります。

会社経営とは、移り変わりゆく社会や環境、消費者ニーズに、会社を変化対応させていくことでもあります。

しかし人間は誰しも過去の成功体験に囚われてしまったり、年齢を重ねるごとに新たな技術や手法への関心が薄れてしまったり、変わることへの抵抗感が芽生えてしまったり・・・ こうしたことは経営者であっても人である限り例外ではありません。

現社長と後継者の年齢に20年程の隔たりがあるとすると、事業承継も概ね20年ごとに行われていくことになります。

これは中小企業に組み込まれた「変化対応のための仕組み」であるとも言えるのではないでしょうか。

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