社内の後継管理者による株式買取り
~ 個人での株式買取資金の借入 ~
「まさか自分が2億円近くもの借入を背負うことになるとは想像もしていませんでしたよ・・・」
このように話してくれたのは、つい1年前までは部長の1人であり、後継社長の道を選んだF社長です。
急病で出社ができなくなってしまった先代社長には子がなく、後継候補者が居ませんでした。
まさかその歳で長期間の療養生活になるとは予想もしておらず、事業承継対策もしていませんでした。
そんな急場であっても会社経営を進めていかなくてはなりません。
そこで現場管理者のなかでも若くて経験も豊富、社内の人望も厚いFさんに白羽の矢が立ったというわけです。
しかし実際に社内の管理者への事業承継を進めるには、いくつかの乗り越えるべき壁があります。
それが「自社株の引き継ぎ」と「個人保証の引き継ぎ」です。
幸いなことに、製造業を営むこの会社は顧客基盤が厚く、自社製品の優位性も高いことから高収益体質であり、財務内容も良好でした。
そこで、取引していた信用金庫に相談をしてみたところ、Fさんが先代社長から自社株式を買い取る資金約2億円を、Fさん個人へ融資してくれる段取りを整えてくれたのです。
これにより先代社長から全ての自社株を引き継ぎ、経営権の全てを取得して会社を引き継ぐことができました。
社内の管理者によるM&Aとも言えます。
しかし実行にあたっては、Fさんにも相当の覚悟が必要でした。
個人で多額の借入を背負うことや、会社の銀行借入の個人保証を引き継ぐことの覚悟です。
これについてFさんは次の様に言っていました。
「先代社長の身内に後継者が居なくても、M&Aによる売却で他社に会社ごと引き受けてもらう道もあったと思います。でも、まったく知らないどこかの会社の傘下に入ってしまうことで、今居る社員たちの調和や良い雰囲気がもし崩れてしまったとしたらとても残念な気がして・・・ だから自分には荷が重いのを承知で引き受けることを決めたのです。」
信用金庫も、こうしたFさんの覚悟や思い、これまでの経験や人望などを考慮したうえで、株式買取資金を融資する判断をしています。
そしてその返済原資は、Fさんが社長になったときに得る役員報酬からということになりますが、これも会社の収益が今後も継続的に得られることを見込んだ役員報酬額とし、そこからの返済を行うことで約2億円もの借入を10年で完済する計画としています。
昨今の事業承継支援では、後継者不在企業の場合にはすぐにM&A、株価が高ければすぐに持株会社方式を活用したスキームへと導かれることが多いものです。
しかし、自社の将来を担う覚悟と意欲と能力などを備えた管理者が自社内に居るのであれば、こうした親族外承継のスキームを検討していくことも良い企業文化を残していくための有効な手立てとなるのです。
・「経営リファイン承継Ⓡ」をより詳しくご覧頂くには下記をご参照下さい。
↓
https://sahara-keiei.jp/businesssuccession/succession04.php
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