管理者に継がせるか?それともM&Aか?
どちらに転んでも良い対応
「佐原さん、実は自分には息子が二人居るのですが、一人は東京の会社で就職していてうちの会社に戻るつもりはなく、もう一人は生まれつき病弱で、ウチの会社を継いでくれる後継者候補は居ないんですよ・・・」
こう打ち明けてくれた72歳の社長は、食品卸売業を営む三代目社長です。
従業員が25名ほど居る会社で、売上推移も利益確保も順調な優良中小企業です。取引先との関係や従業員のことを思うと、なんとかして会社を残していきたい、というのが社長の思いでした。
近年では、中小企業の後継者不在を背景にM&Aを活用した事業承継が増えています。
親族での後継者候補が居なかったり、息子や娘が居ても都心での大手企業勤務であったり、医師や弁護士になっていたりすると、地元に戻ってきて家業を継ぐ可能性が狭まってしまいます。
親族の後継者が事業を引き継がないからといってすぐに自主廃業をしてしまうのは非常にもったいないことです。なぜなら、これまでに培ってきた技術や製品も、お客様や地域と築いてきた関係も、従業員たちの職場も失われてしまうからです。
そこで会社をそっくりそのまま他社に引き受けてもらうための有効な手段がM&Aでの売却なのですが、全ての中小企業が売却できるかというとそうでもありません。まず、売却企業としての価値が有るか無いかという点を見極める必要があります。
それは、財務内容や製品や商品力、顧客基盤、組織体制などがきちんと整っていて、買い手企業が引き受けた後にも継続的に収益を上げ続けられるか、という「事業性」を備えている必要があります。
そして何よりも理想とする買い手企業の候補が現れ、自社を引き受けてくれなければM&Aによる事業承継は進められません。
会社の事業内容や業種によっても異なりますが、「買い手がつきやすい会社」と「買い手がつきにくい会社」があるのが事実です。
ですから、親族内後継者が不在の社長の立場で事業承継を進めようとしたときには、「M&Aによる売却」と「親族外の管理者への承継」を同時並行的に進めるのが現実的と言えます。
冒頭の食品卸売業の社長も、親族外のA部長に継がせたいという思いがあったのですが、自社株式の買取資金や管理能力などの面でいくつかの課題を抱えていました。
A部長に継がせようとしても、その人が個人で1億円を超える株式買取資金を用意するには、金融機関との資金調達の調整や多額の借入を負う覚悟など、相当のハードルがあります。
こうした経緯から社長としては、M&Aによる売却と親族外A部長への承継の二つの道を同時並行的に進めることにしたのです。
後継候補者となったA部長が乗り越えるべき課題は、株式買取資金の調達以外にも、会社の銀行借入の個人保証を負う覚悟や、継続的に利益を上げ続ける経営管理能力があるかということでした。
社長とA部長、佐原の三人での事業承継に向けた話し合いを何度も進め、関係者や会社にとって最も良い方向を模索することにしたのです。
・「経営リファイン承継Ⓡ」をより詳しくご覧頂くには下記をご参照下さい。
↓
https://sahara-keiei.jp/businesssuccession/succession04.php
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