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亊業承継コラム「後継社長への軍略書」

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COLUMN 94

「再来月からお前に社長を継ぐよ・・・」

~社長交代を口に出すきっかけ~

「再来月からお前に社長を継ぐよ・・・」.JPG

佐原さん・・・打ち合わせの前にちょっとだけ私から話をさせてもらいたいのですが・・・

こう切り出したのは、67歳になる豊田市の建設業の社長さんです。

私が毎月訪問するコンサル顧問先なのですが、社長のほかに息子であり後継者の専務、経理担当者、営業担当者などを含めた6名での定例打合せをする前のことでした。

そして社長はおもむろにこう言いました。「再来月から専務に社長を交代しようと思う。

私を含めたその場の一同は、突然の言葉に一瞬驚き、そして嬉しいような、でもちょっと寂しいような色々な思いが入り混じった顔をしました。

えっ?そんなこと前から決まっていたっけ?」最も驚いたのは後継者の専務でした。

その驚きの表情とともに、会社を任せてもらえることの嬉しさや、これから経営を担っていくことの責任感やプレッシャーを同時に感じているような表情でした。

これまでにも事業承継の話題を時折は出していましたが、社長は専務に社長業を継ぐタイミングを計っているような様子がありました。

なぜなら、これまでは堅調な営業成績を挙げてきたものの、建設工事の受注確保とそれによる利益確保が以前と比べて難しくなってきたからです。

それは、大手や中堅建設業との競合激化や住宅環境に対するニーズの変化、受注確保のためのWEBマーケティングの巧拙などが経営に与える影響が大きくなってきたことにも起因します。

 それでも、このタイミングで社長が事業承継を決断したのには、専務が経営管理や営業管理などをしっかりと回すことのできる一人前の経営者として認めたことの証でもありました。

こうした社長交代の節目に事業承継コンサルとして立ち会えることは、私としてもとても嬉しいことであり、またこれからまた忙しくなるぞ、と腕まくりをしたくなるような心情でした。

 そして、3時間ほどの打ち合わせの後、社長は私にこのように言ってくれました。

「佐原さん、やっとこの日を迎えることができました。どうやって息子に会社を引き継いでいこうかと何年も自分一人で思い悩んできました。でもこうして専務が主体となって経営を進めるための会議を運営してもらい、経営方針書や経営計画などを一緒に作成してもらえたことで、専務が新社長になった後の筋道が鮮明になったような気がしました。

だからこのタイミングで会社を引き継ごうと決心ができたのです。本当にありがとうございました。」

 こみ上げる嬉しさと共に、この言葉を聞いて改めて実感しました。

社長が事業承継を前向きに進めるためには、まずは社長と後継者が一緒になって会社の将来や経営方針、経営計画などについて前向きに話し合いができる「場」をつくることがとても重要になります。

そしてその場では、できるかぎり後継者の経営方針や営業などの取り組みに対する考えを引き出し、それを辛抱強く継続的に実行させ、小さな成果を積み上げることです。

それが、後継者の自信や経営能力向上につながり、延いては社長や社員への安心感や次期社長としての信頼感に繋がっていくのです。

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