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亊業承継コラム「後継社長への軍略書」

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COLUMN 93

金庫が空かない?! 支払いもできない?!

いつか来る「その日」

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「佐原さん・・・いやぁ・・・今回は本当に参ってしまいました・・・」

そう言ってご相談に来られたのは、某新聞販売店の元専務さんです。

話を聞いてみると、父である社長がつい先日、急に具合が悪くなって倒れ込み、そのまま帰らぬ人になってしまったというのです。

佐原も2年程前に社長と専務を交えて事業承継対策の必要性をお伝えしたことがありましたが、特にこれといった承継対策をしないうちに旅立ってしまいました。

前日までは元気に友人達とゴルフに行っていたそうで、これといった重い持病があるわけでもなかったそうです。

人の命というものは本当に儚いものです。

 その時、困ってしまったのは元専務(新社長)である息子さんです。

なにしろ、まさか社長がある日突然にこの世から居なくなるとは全く想定しておらず、金庫の鍵も、銀行預金口座の印鑑もどこにあるのかさえわかりません

おそらく金庫の中に保管してあるということは予想できても、その金庫が開きません。

ただでさえ社長のお通夜や葬儀などの対応に追われるなかで、会社経営の方は新聞配達業務やスタッフのシフト組み、給料や仕入れの支払いといった業務は待ってはくれません。

支払いが滞ってしまったり、支払手形の決済ができなければ、手形不渡り、事実上の倒産という最悪の事態が待っています。

 元専務の必死の対応により、一時の支払い用資金をかき集め、また取引金融機関さんの機転によってなんとか支払いを行うことができたそうです。

 この新聞販売店だけでなく、他にもこうして社長や経営の根幹に関わっていた人が、なんらかの事情である日突然に出社できなくなってしまうということは決して珍しい話ではありません。

会社は「公器」と言われます。一人で起ち上げた事業も次第に大きくなり、そこに関わる社員とその家族、取引先、金融機関などのステイクホルダー(利害関係者)が増えるにつれて公の器になっていきます。

すると、その公器を率いる社長自身の立場もまた、関係する多くの人達への影響力が大きくなっていきます。自分だけの自分ではなくなっていくということです。

縁起でもないことを書きますが、「人間の死亡率は100%」です。

これは紛れもない事実です。

誰の下にもいつか必ず「その日」が訪れます。多くの人が、自分がいつか、ひょっとしたら突然にこの世を去るなどということは考えたくもないし、考えてもいないでしょう。

それでも経営者たる者は、自分がこの世からある日突然に居なくなったことを想定して事業承継対策を進めておく必要があります。

 なぜなら、息子や娘、管理者といった後継候補者からは、それを言い出すことは非常に難しく、現社長自らが気づいて決断し、行動していくしかないからです。

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