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COLUMN 88

M&Aで売却しづらい会社

売れない理由

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「佐原さん、ご無沙汰してます! 最近、M&A案件は増えているんじゃないですか?

 実は最近、お付き合いのある会社で会社を畳もうか迷っている会社がありまして・・・

 でも自主廃業をしてしまう前に、一度M&Aでの売却ができないか検討してもらえないかと思いまして・・・」

このように相談をしてくれたのは、古くからの知り合いの金融機関の担当者でした。

まずは会社に伺って現場を見ながら社長のお話をお聞きしたいと思い、面談のアポを取って頂くようにお願いしました。

実際には、電話でその担当者さんから会社の財務状況や事業内容について少しだけお話を伺いましたが、ちょっと難しそうかな、とも思いました。

なぜなら、財務状況は債務者区分で破綻懸念先に近く、借入返済をしていくだけの資金余力も少なく、そして生産設備も老朽化しているとのことでしたので。

とは言っても折角頂いたお話ですので、一度会社に行って社長にお会いすることになったのです。

会社訪問の当日になり、会社に行く道中では・・・

まず会社のHPを閲覧しようと思うわけですが、70歳を超えた社長が率いる下請け製造業では、HPを作成している会社は少数派です。

ですから、もし世間の他の会社で、その会社の技術や加工を欲しいと思っている会社が有ったとしても、WEB上から見つけてもらうことはまず叶いません。

そして細くてわかりづらい道を入っていったその奥に、その会社はありました。

60坪くらいの工場のなかには所狭しと生産設備が並んでいました。

その加工機を扱う作業者さんは、ほぼ全員が外国人の女性スタッフ達です。

加工機について社長に聞いてみると、専用機と言われる特定の製品を製造することに特化した機能を持つ生産設備でした。

つまり、他の製品を作ろうとしても、なかなか汎用が効かないというわけです。

しかもその製品分野は、今後の需要減少が見込まれる製品群をつくるための専用機だったのです。

M&Aで売却をしようとしても、なかなか買い手候補が付きづらい業種があります。

この会社のような特定製品をつくるための専用機、それも老朽化した設備を揃える会社は、他の製品製造への転用がききづらく、売却が難しい会社といえます。

そして社長に、「作業スタッフさんたち、皆女性でよく働いてくれているみたいですが、どのようなビザで働いているのですか?」とお聞きすると・・・

社長の口がモゴモゴして、明確な回答が得られませんでした。

これは後々になって、買い手候補が付いたとしても労務上の問題になる可能性が高いと言えます。

この会社さんでは次のような売り案件にしづらい条件が揃っていました。

・厳しい財務状況

・老朽化した専用機の設備

・需要減少が今後も見込まれる製品を製造する下請け製造業

・労務問題の不安

・不利な工場立地

どこかに良い点があるのではないかと思って探してみたり、聞いてみたりするのですが、残念ながらそれを見出すことはできませんでした。

仮にそうした強みの点が有ったとしても、マイナス面を埋め合わせることは難しいように思われました。

後継者難、事業承継難からM&Aでの売却を考える社長が増えていますが、売却案件にできるような状態を維持しておくことが最低限の条件と言えるでしょう。

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