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亊業承継コラム「後継社長への軍略書」

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COLUMN 86

外注先から単価引き上げ要請を受ける下請製造業

コロナ禍で加速する変化のスピード

外注先から単価引き上げ要請を受ける下請け製造業.JPG

佐原さん・・・ 外注先のX社から単価引き上げの依頼を受けまして・・・

 今の単価じゃとても採算が合わないからと言って、これまでの受注単価を20%ほど上げて欲しいと言われてしまいまして・・・」

こうした話をしてくれたのは、従業員30名ほどの中小製造業です。

これまで、発注先である大手メーカーから、合理化の名の下に単価引き上げ要請は半年に一度ほどは恒例行事としてありました。

しかし今回の単価引き上げ要請は、この会社が外注加工をお願いしている従業員規模2名~5名ほどの小規模零細製造業です。

これまでに単価を引き上げて欲しいという要望を受けたことが無かったので、冒頭の相談をしてきてくれた社長は驚きとともにその対応を思案していたのです。

こうした家内的な加工をしている小規模製造業から、今のこのタイミングでどうして単価引き上げの声が上がるのかとその背景を推測してみると、透けて見えることがありました。

それは、①コロナ禍による受注減少と業績苦戦、②後継者難と今後の自主廃業を見据えた動き、の二つです。

まず「①コロナ禍による受注減少と業績苦戦」ですが、これは正確に言うと、これまでにジワリと進んできた構造変化、つまり自動車部品製造業のなかでもエンジン部品を製造する業種に関連しています。

実はコロナ禍前から、特にミッションやギアなどのガソリンエンジンに用いられる部品を製造する中小製造業は、少しずつ受注減少傾向にありました。

自動車販売台数の伸び悩みといったこともその背景にあると考えられます。

そうした受注減少傾向が、コロナ禍で一気に進んだように感じられます。

一時よりも受注回復傾向にあるものの、それでも令和2年3月の水準までは戻り切っていない会社が多いように感じてます。

こうしたコロナ禍による一時的な受注減少のなかで、借入残高を増やして急場を凌いでいる会社も少なくなりません。

そして「②後継者難と今後の自主廃業を見据えた動き」です。

こちらも、これまでは50歳代~60歳代の社長さんたちが、自分が経営できるうちは経営していこうという気持ちでいたものが、コロナ禍で借入残高が増えたり、財務内容が悪化したことで、自主廃業も視野に入れるようになったというものです。

これまでは財務内容が良好な小規模製造業が、「今の状態であれば、まだなんとか自主廃業できる。これ以上借入が増えたらそうもいかないだろう・・・」と考え始めている社長が増えているように感じます。

実際に佐原の直接に関わっている中小製造業の社長達からも、同様の声が複数聞かれます。

そして自主廃業を視野にいれたときに考えることが、「このまま経営体力を絞られてしまうくらいなら、今のうちに言うべき事を言っておこう。」と考え、単価引き上げの要請をかけていると考えられます。

これまでは、発注先から単価引き下げ要請を受けていた中小製造業も、その外注先から単価引き上げ交渉を受けたことのある会社は比較的少ないのではないでしょうか。

そして、これからはそうした要請に対して対処をしていく必要に迫られます。

どのような対処をしていくべきでしょうか?

それには、次の3つの方策が考えられます。

①当該製品の原価計算

 単価引き上げ要請を受けた製品の原価計算を行い、どの程度なら自社で吸収できるのか、できない場合には発注先に対していくらの単価引き上げ要請をすべきかを計算します。

そしてその外注先に依頼している他の製品についても、今後は引上げ要請がくることも想定されますので、併せて原価計算をしておきます。

他の製品との採算性のバランスもあるでしょう。

即ち、その外注先が利益を出しやすい品番と、不採算な品番です。

そして最悪の場合、その品番が製造できなくなった場合や、製造しない判断をした場合のリスクも想定します。

②発注先への単価引き上げ要請

外注費が上がったことを織り込んだ原価計算をしたうえで、そうした事情を発注先に話をしつつ、単価引き上げの依頼をしていきます。

そうした場合、原価計算ではあくまで製品をつくるのに必要な原価が算出されるだけで、その上に乗せるべき利益率までを開示する必要はないと思います。

発注先がその単価引き上げ要請を受けて、どのような対応をしてくるのか?

単価引き上げに応じる用意があるのか、それとも全く相談にも応じないのか・・・

発注先がどれだけ下請け企業の経営のことを考えてくれているのか、その本心が透けて見えるときでもあります。

③他の外注先の探索と複線化

先のような零細製造業が、言ってみれば会社の存亡をかけた単価引き上げ要請をしてくるには、相当の覚悟を決めての行動と思われます。

即ち、自主廃業も視野に入れての行動です。

ということは、遠からず段階的な事業縮小や自主廃業を想定し、粛々と進めていくことも考えられます。

そうしたリスクを想定し、早い段階から外注調達先の複線化を図っておきたいものです。

つまり今の外注加工と同様の加工を、できれば同程度の価格で請けてくれる先を今から探しておくということです。

こうした動きはこれから世の中で起こっていくであろう変化のほんの一部であるように感じます。

コロナ禍による直接的な不況というよりも、元から進むであったであろう構造変化のスピードが早まったと言えます。

EV化など次世代自動車への遷移、リモートワーク、シェアリングエコノミー、副業(複業)、事業承継とM&A・・・

変化を先取りした対応がこれまで以上に求められています。

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