後継者が成長するとき
試練と失敗を繰り返して人は成長する
「後継者が経営者として十分に成長したら会社を引継ごう。」
このように考えている社長は多い。
しかし、計画的かつ体系的に後継者教育を行っている中小企業はまだまだ少ないのが現状ではないだろうか。
「経営能力なんてものは、会社経営の実務のなかで会得するものだ。」
このような声がベテラン経営者から聞こえてきそうだ。
確かにそれも一理はある。
しかし、後継者教育は上記のような実質「成り行き任せ」ではいけない。
一方で、学ぶ側である後継者の姿勢も大事である。
優れた後継者は、自分自身で次々に経営に必要な知識や経験を吸収していく。
それは、書籍やセミナー受講からの経営に関する知識習得だけでなく、多くの人に積極的に関わることで生きた経営の学びを自分の血肉にしていくのだ。
そして、それらの学びを自社の経営として実行し、検証し、蓄積していく。
こうした前向きな後継者であれば、現社長の心配は少ない。
むしろ、後継者の方から経営革新や新事業展開などについて背中を押されるくらいだったりするかもしれない。
問題は、後継者に経営能力を高めようとする意識や行動が欠けている場合だ。
当の本人としては「自分なりに頑張っているんです!」という意識かもしれない。
しかし、「頑張っている」ことを口に出して言う人に限って、考えや行動に甘さがある場合が多い。
その裏には「自分なりに頑張っているのだから、成果を上げられなくても仕方がない。」という言い訳と逃げの姿勢が垣間見えるからだ。
人が何らかの目標を成し遂げようとしたとき、次の三つの視点で考えることが効果的である。
①能力:掲げた目標を達成するのに必要な能力
②行動:目標達成に向けた取るべき行動
③環境:目標達成に必要な行動を起こさざるを得ない環境に身を置く
これらは、難易度が低い順に ③環境 > ②行動 > ①能力 となっている。
自らの能力を上げれば目標を達成しやすいが、能力アップには努力と時間を要する。
必要な行動を継続していけば目標に少しずつ近づくことができるが、思うように行動できないときもある。(人の意思の弱さのこと)
しかし、誰でも目標達成に向けて行動せざるを得ないような環境に敢えて身を投じることで、周りが驚くような行動力や継続力を発揮し、成果に結びつけるような場面が少なくない。
例えば、中小企業の後継者であれば、頼りにしていた現社長(父であったりする)が突然に会社経営の場から居なくなってしまうような場面である。
これには二つのパターンがある。
一つ目は現社長の急病や急逝により会社経営の場から突然にいなくなる場合である。
この場合、後継者や残された社員は、大変な苦労をすることになる。
一例を挙げると・・・
・会社の金庫も開けられず、印鑑や預金通帳が出せない。支払が滞る
・会社経営のことを理解できないまま、経営をせざるを得ない
・会社のことだけでも大変なのに、相続手続きなどで親族間でも揉める
などなどその他、挙げだしたら枚挙に遑が無い。
いろいろな重大事項が後継者の下へ一挙に押し寄せ、心身ともに追いつめられることになる。
しかし、半年ほど経ってこうした試練を乗り越えた後に、見違えるほど成長した後継者に再開する場面を何度となく私はしてきた。
勿論、試練を乗り越えられれば、という条件付きではあるので望ましいパターンではない。
二つ目は、現社長が意識的に後継者を経営の前面に出す決断をした場合である。
売上140億円程の食品卸売業A社では、現社長a氏が40歳のとき、父である先代社長からこのように言われたそうだ。
「来月からお前に社長になってもらうから頼むよ。」
どうやらこの父は、a氏が新社会人になったときから「自社の決算書から経営分析を行い、課題と改善策を出すように。」とか、難度の高い宿題を与えていたようである。
後継者それぞれの能力や経験にもよるが、敢えてこうした課題を与えてみてはいかがだろうか。
また、課題を与えるだけでなく先の環境の話のように、後継者が自ら動かざるを得ない環境、つまり営業部長や経理部長などの肩書きを与え、相応の責任を負わすなどの取り組みを後継者教育の一環として取り入れる必要があるのではないだろうか。
人はいつ、どのような場面で成長すると思われるだろうか。
私は下記のような場面でしか、人は成長できないと考えている。
・試練に直面し、自分で立ち向かわざるを得ない状況に置かれたとき
・手痛い失敗をしたとき
・本当にこの目標を成し遂げたいと心から念じ、行動を起こしたとき
では、後継者の成長のために、このような環境に意識的に身を置かせるにはどのような取組みができるだろうか?
㈱経営支援パートナーでは、事業承継に際しての後継者教育サービスを、それぞれの会社様や後継者様の状況に合わせてカスタマイズし、提供しています。
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