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COLUMN 31

社長の退職金を巡るトラブル

損金算入限度額よりも会社の資金力で判断する

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いよいよ後継者に事業承継を行おうか、というタイミングで生じるトラブルがいくつかある。

そのうちの一つが社長の退職金、つまり役員退職慰労金の金額を巡るトラブルである。

これまでに社長と後継者が良い関係でやってきたように見える会社であっても、この金額を決める段階になって関係がギクシャクするケースを何度も目の当りにしてきた。

【A社の後継社長(事業を引継いで10年程)のケース】

事業を叔父から引き継いで10年ほど経過した段階で、承継時のトラブルについてその重い口を開いてくれた。

「ともかく、先代である叔父は、自分へ社長の代を譲った後でも何かと経営に口出しをし、社長室に居座っていました。

自社株の多くを持っていたせいか、株主としての権利も過剰に主張したり、元々関係はギクシャクしていました。

 あるとき、税理士に作成してもらった月次試算表に目を通すと、とんでもない金額の赤字が出ていました。その金額は欠損7,000万円程!!!

 特別損失として、叔父への役員退職慰労金が9,000万円ほど支払われていたのです。

 そんな資金が当社にあるはずもないし、どういった資金で支払われていたのかわからず、一瞬呆気にとられました。

すぐさま、顧問税理士に尋ねると、金融機関から借入調達をして、退職金を支払ったというのです。

なぜ、税理士の立場として後継社長である自分に知らせてくれなかったのか、問い詰めました。しかし、前の社長である叔父からの要請を断りきれなかったとのことでした・・・」

こうしたケースは珍しい話ではなく、後継者が専務であったり、新社長になったばかりのタイミングでも時々耳にすることである。

また、別のB社でも同様のことが8年ほど前にあったと聞いた。

そうした会社では、借入金の返済負担が増し、後継者が設備投資をしたくても、社員の昇給や賞与支払いをしたくても、借入返済分を差し引いた後の金額しか支払ができない。

結果として、後の代の後継社長や社員が、そのツケを払っていくことになるのだ。

勿論、退任する社長も相応の貢献を会社にもたらしているのであれば、相応の退職金を頂いても良いと思う。

しかし、会社の体力と比べて過剰な退職金額になると、後々まで経営の足を引っ張ることになる

しかし、そもそもどうしてこのようなことが起きてしまうのだろうか?

それは、どうやら税法で認められる「役員退職慰労金の損金算入限度額」を、「もらえる役員報酬額」と都合よく解釈して支払われていることにあるようだ

ちなみに役員退職慰労金の損金算入限度額は下記のような算式で計算される。

役員退職金額=最終月額報酬×役員在職年数×功績倍率

功績倍率は、代表取締役の場合には3倍が限度と言われている。

しかし、この計算式で算出すると、月額報酬が高く、役員在職年数が長い社長は、多額になることがわかるだろう。

会社が支払い可能な金額は、財務体質や資金繰り状況を勘案して決めなければ、後々の経営に悪影響を及ぼすことは必然である。

他に考慮すべき点として、自社株の移転に関わる場合だ。

会社の自社株評価額が高騰している場合には、社長の役員退職金を支払うことで自社株評価額を引き下げ、その後に後継者に自社株を移転していくことを想定して、支払金額を決める場合もある。

いずれにしても、事業承継を巡る親族間の揉め事は「コミュニケーション不足」が原因となる場合が多い。

折角、事業を引継いでくれる後継者や社員に後々の経営難による苦労を残さないためにも、また、親族間の亀裂が生じないようにするためにも、退職金額の算定と支払方針についてじっくりと話し合いの機会を持つことが肝要である。

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