後継社長の夫婦円満
家庭を良く治める者は、会社も良く治める
事業承継対策は、「会社の」問題であり節目であり、企業永続のための手段でもある。
このように書くと、当然であろうと思われる。
しかし一方で、特に中小企業の場合には経営者の親族と身内の問題とは切っても切れない関係にある。
経営陣が、親兄弟や夫婦といった親族であるからこそ、固い結束で結ばれている会社がある反面、親族間の亀裂が大きくなり骨肉の争いになってしまう会社もある。
ちょっとした意見相違ならば、冷静かつ建設的な話し合いで解決できることもある。
しかし、お互いの感情面で揉めてしまうと関係修復が極めて困難な状態に陥る。
それも、二人の当事者の裏に複数人の支持者がつき、複数人での揉め事にまで発展するとさらにやっかいなことになる。
事業承継対策というと、自社株移転や税金対策、後継者育成など、法律や経営学に基づく教科書的な対策が、書籍や政府のパンフレットに踊っている。
しかし事業承継の現場で起こっている事は、学問でも論理でも綺麗事でもなく、極めて人間臭くて感情的な問題が多いのが実際の現場である。
そのうちの一つが、後継社長の夫婦関係である。
佐原が関与した事業承継支援先においても、様々な後継者夫婦間の問題があった。
例を挙げると次のようなことである。
・経理部長の母から妻への経理業務引継ぎで揉め、二人の狭間に立たされる後継者
・連日の顧客接待を妻から浮気と勘違いされ、思うように動けない後継社長
・後継社長の朝晩休日を厭わない働き方を許してくれない妻
・業績不振と金策に走り回る毎日に嫌気が差し、別居を選んだ妻
・業績不振から自信を失い、妻を養うことにも自信を失ってしまった後継社長
挙げだしたら枚挙に遑(いとま)がない。
夫婦の結束を固めて二人三脚経営ができれば理想的なのだが、それほど単純に事は進まないようである。
後継者の夫婦関係が気まずくなってしまう要因の多くは、夫である後継者側にあるような気がしている。
なぜなら、関係が上手くいっている社長夫婦は、夫である社長側が妻に上手に気を回したり、仕事と家庭のバランスを取ってみたり、妻の心配事を上手に取り除いたりをしているからである。
会社の社内を上手に治めるのは社長の使命、
家庭内を上手に治めるのは夫の使命なのだろう。
視点を変えると、私達の集団の最小単位である家庭を上手く治められないのに、より大きく色々な人達が集まる会社組織を束ねることなど難しいのかもしれない。
場合によっては、佐原が後継者夫婦の間を取り持つ仲介役になる場合もある。
とはいっても、当事者の二人には仲介役を担っていることを悟られないように、さりげなく慎重にやるわけであるが・・・
後継社長の夫婦間の誤解や疑念をさりげなく取り除いたり・・・
妻が不満に思っている社長の行動をさりげなく改めるように仕向けたり・・・
場合によっては、社長の家族旅行の計画を立て、家族の思い出づくりを促したり・・・
私の思いとしては、後継社長の憂いを取り払い、奥様を含めた家族経営者にはこれまで以上に後継社長の味方になってもらい、会社経営を上手く回していって頂きたいと願うのだ。