40代社長が考える次世代への事業承継
次世代が継ぎたくなる会社づくり
世間では事業承継の話題が多い。書籍、セミナー、事業承継税制、公的支援など。
当然ながら、これから承継を進める会社が対象である。
一方で、ここ10年程で既に社長を交代し、自分の体制を築いてきた40代社長も多いのではないだろうか。
そうした40代の後継社長のなかにも、子が成人し、自社に入社をしている中小企業社長を時々見かけるようになってきた。
40代の後継社長にしてみると、我が子が自分の生きる道として、自社を選んでくれることが嬉しい。
場合によっては、親子孫の3代が自社に入って仕事をしている会社も少なくない。
孫が自社に入社すると、特に喜ぶのが祖父、祖母である。
「孫と一緒に自社の仕事ができるとは思わなかった!」と、かなりの喜びようである。
自然に3代の絆や親族間の人間関係も良くなってくるようだ。
このように、自らが承継した会社に、その子が入社して次世代への承継の準備が進められる体制が整いつつあることは、親族内承継の理想的な姿とも言える。
このように子が入社してくれる会社とは、どのような会社であろうか。
私の周りの会社では次のような条件が整っているように思われる。
①40代後継社長が活き活きと社長業に専念している
これは第一条件ではないだろうか。
親がいつも辛そうに仕事をしている姿を見て「自社には入りたくない。」と考える社長の子息子女が多いことがそれを物語っている。
逆に「こんな辛くて大変な仕事は子には継がせたくない。」と考えている社長達の子も同様である。
活き活きと社長業に専念している人は、本当に仕事が辛くないのであろうか?
そんなことはなく、会社を経営するということは、常に多くの困難や気苦労との戦いである。それを外に見せるか、見せないかの違いなのではないだろうか。
②子が自社の仕事を手伝った経験がある
最近になって自社に入社している子達は、高校生や大学生の時に家業である自社の仕事を手伝ったことのある子が多い。
自社の仕事がどのような仕事かわからなければ、入社するかしないかの判断が難しいが、少しでも現場を見ていると肌で感じる何かがあるようである。
このことは、その後の就職先を考えるうえでの判断にも繋がっているように感じる。
③事業の将来展望が描けている
40代後継社長が、自らも継いだ自社の将来展望を明確に描けている場合が多い。これには事業の業種や業態はあまり関係がない。
世間では斜陽産業に位置付けられる業種・業態であっても、40代後継社長がなんらかの経営革新や新事業展開を進めており、その成果が見えはじめている結果である。
そしてその新事業のなかに、後継候補者である子の活躍場所が確保されているのである。
④親が子に任せられる部門や仕事がある
40代後継社長は、自分が先代から継いだときに苦労をした経験のある人が多い。
自分がやりたい新事業や経営革新があっても先代社長からダメ出しをされた経験があるのだ。
そうした経験を経た40代後継社長の中には、子が入社したときには、何かしらの部門や事業を任せていきたいと考えている人が居る。
子の自主性やチャレンジ意欲を尊重し、それを経験させる場を用意しているのだ。
⑤自社と関連する事業を営む他社に修行に出たことがある
親が考えている以上に、子は自社を継ぐことを意識しているように思えてならない。
これまでに佐原が関わった会社では、親が自社を継いでくれとも言っていないのに、子が自社と関連する事業を営む他社に就職先を求める場合が意外に多い。
それは、子が学生時代に見た、自社の現場や業務内容が心のどこかに引っかかっており、その仕事に親近感や安心感を持っているからかもしれない。
40代後継社長が、子が自社を継いでくれることを望むのであれば、自社の事業と関連のある企業への就職を、修行という意味で勧めることも一案であろう。
このように考えてみると、後継社長は、後の代が自社を継ぎたくなるような会社に磨き上げることが使命ではないかと思う。
それは、後継者のためだけではなく、勤めている従業員やお取引先様など、会社に関わる全ての人や組織に対する使命であり責務であろう。
相応の苦労はあれど、そうして会社を磨き上げることが、延いては自分の子孫のためであり、社会のためになっていき、自分自身に返ってくるのではないかと思う。